雨音

　九州の南部は梅雨入りしたとのこと。今日は昼頃から激しい雨が降っている。時々雨脚が弱くなることもあるけれど、ずっと降り続いている。

　私は父が建設省勤務の公務員だったので、記憶もないくらい幼い時から高校受験の頃まで、大分、福岡、宮崎、沖縄そして熊本と、各県を数年おきに転居を繰り返していた。
どこに行っても強烈に印象に残っているのは「大雨」と「台風」。なかなかに九州生まれの九州育ちらしい記憶だ。

　休日の朝から優しく降り注ぐ雨の音はうっとりと心地良いもの。
でも九州で、この梅雨の時期に降る大雨や、これからシーズンとなる台風の時の雨は違う。
慣れ親しんだ自宅の部屋に居ても、不安というほどはっきりとした形をしてもいないのだが、みぞおちの辺りがシクシクするような何とも言えない落ち着きの無さを覚える。

　自分用の車や携帯、パソコンからクリック一つでお買い物。インターネットで購入できるものなら、どんなに遠いところからでも玄関まで配達されてくる。
洗濯は洗濯機。天気が悪くても風呂場で乾燥機をかければ、ふんわりいい匂いに乾く清潔な衣服。
私にとって今日のような「大雨」や「台風」は、そんな便利な生活を享受している日常の中で、忘れかけていた自然の猛威、抗いがたい強烈なエネルギーを思い出させてくれるものだ。

　本当に荒ぶる雨風に対して、人はなすすべを持たない。身を寄せて過ぎ去るのを待つのみ。その恐れや息を潜めてじっと待つ時間が人を謙虚にしてくれる。そう思う。

地球温暖化が叫ばれる今。北極海の氷が全て溶け去るのも時間の問題と警告される今。謙虚に。粛々と。為すべきことをしなければ、手遅れになってしまう。
寝室で安らかに眠る息子たちの気配を感じながら、そんなことを真剣に考える、雨の夜。