単純作業

　違う種類の紙をそれぞれ二つに折って、片方をもう一枚に挟み込む。学生時代に広告チラシの折込バイトをしたことがあるが、あの要領。
作業していると、時が経つのを忘れてしまう。
目がしょぼしょぼし、肩が強張り、腰が曲がったまま痛くて伸ばせないくらいになっても手が止まらない。

　あれな何なのだろうな…？？
出来上がっていくのが嬉しいとか、そんな生き生きとした感情はあまりなく、淡々とひたすらに作業没頭する時の、あの心地良さ。
知力も体力も使わずに、でも決して無益に時間を過ごしているわけではなく、ちゃんと働いているんだという、そこはかとない満足感。
それに部数を数えながら黙々と手を動かしていると、その間結構無の境地になる。

　うん、それが気持ちよいのかもしれないな…。起きている時間帯の間に「無」になって何かに打ち込むなんて、なかなかできるもんじゃない。
してみるとやはり、頭脳の活動というのは結構心身を疲弊させ、ダメージを与えるものなのだな。
精神科系のリハビリで「作業療法」というのがあるらしいけれど、これを狙っているんだな。一つのことに集中していたら、人間そう深刻に悩み苦しまずに済むのだろう…。ついいろいろと頭で考えてしまう、悪い癖を直さなきゃ。