持てる者の…

　仕事から帰宅して、一人で夕飯中（子供と今日休みだった夫は先に済ませていたため）。テレビの画面にアラブのお金持ちの裕福ぶりが映っていた。砂漠に専用のガレージを作ってベンツやフェラーリを何十台も持っていたり、ポケットマネーの130億でカーレースを主催、レース場を維持したり、豪華な家、一人につき100人の召使いがついていたり。
　心から、「何て下品でみっともないのだろう」と思った。

　負け惜しみではない。こんなお金の使い方をするのなら、もっと世の中の役に立つ使い方をすればいいのに、と思ったのだ。学校に行けない子供たちに奨学金を与えるとか、エイズで親を亡くした子供たちに援助するとか、産業のない国に何か働き口になるような場を提供する、とか。

　もちろん、テレビの人たちがすることだから、視聴者の注目を集めるためにその贅沢ぶりのみをクローズアップしたのみで、実は人道支援的な活動もきちんとなさっているのかもしれない。番組をちょっと見ただけで、彼らを批判するつもりもないし、またその立場にもいないわけだが。
　要するに「持てる者の義務」ということを考えたのだ。

　と、ここまで書いてハッとした。私だって、食べるものにも事欠くような国々の人たちから見たら十分に無駄に贅沢をしているのではないか…？書棚には興味のままに買い揃え、たいして読まない本が山積み、クローゼットの中には何回かしか着ていないような服が並び、冷蔵庫や食品庫には、適当に買った食べ物が忘れ去られたま、賞味期限を過ぎたりしている。携帯電話、パソコン、車だって私専用のものを好きに使っている。人のことは言えない。人を批判することは出来ない。程度の差でしかないのだ。

　出来る範囲で何かしよう。ユニセフにいくらかでも寄付をしようか。もちろん全てを投げ打つことなどできない。手放した瞬間に忘れることが出来る、そのくらい。「そんなことで自己満足か、その程度か」と笑われるかもしれない。
　でも…。いくらかでも手放すことができるだけ少しはマシだ、と思ってもいいような気がする。わずかではあっても、何かに役立てて欲しいという気持ちを持っているわけだから。また、今の生活に感謝を忘れてはいけない、とも思う。明日の米にも困る状態なら、いくら気持ちがあっても、そんなことは出来ないわけだから。

　全ては神から与えられたものであって、「個人のもの」など一つもないし、「死んでから持っていけるもの」もない。それは分かっているけれど…。　結局私は「お金が大事で大好き（というか、誤解を怖れずに言えば、私にとってある程度のお金の余裕があることは、ある種の自由と尊厳を保つということを意味するのだ）」で、「執着心を捨てきれていない」人間なんだ。今の私の正直なところ。道は遠い。