食べても食べても太らないって…

　大食い選手、という方々がいる。最近は可愛らしい若い女性で大食いの方がよくテレビに出ている。美味しそうに数キロ分の食べ物を次々に口に入れてゆく。そして全然太らない、どころか華奢な方だ。最初はちょっとうらやましかった。でもこの頃はむしろ少し気の毒なような気がしている。

もちろん、私は大食いの方を非難するつもりも、貶めるつもりも全く無い。どちらかというと「いや～、すごいなあ。」と感慨をもって眺め、また仕事で無理をして健康を害さないようにと祈る気持ちのほうが強い。ただ、勝手に推測したり、感じたことをつらつらと書こうか、と思う。

　うらやましい、というのはもちろん大量に食べても肥満に苦しむことがないであろうその体質。気の毒では？と感じるのは、食べても食べてお腹は妊婦のようにそこだけ巨大に張り出している、それなのにどうも満腹、満足を感じていないように見えるところ。何だか、満たされることなく地獄で苦しんでいる、という「餓鬼」を彷彿としてしまうのだ。

　それに食べる、というのは案外エネルギーを使うものだし、経済的な問題もあるだろう。大量に食べる様子をテレビで流して、「見世物」的な視線を浴びるのだって、もともと芸能人を目指していた方ならともかく、どうなのだろう。あまり気持ちの良いものではないのではなかろうか。それに食べている瞬間以外常に空腹感にさいなまれているとも聞く。平穏で豊かな時代はともかく、何かの拍子に食料難にでもなったらどれほど苦しむことだろう。なんだか大量に食べる、食べざるを得ない、というのも苦しみの一つのようにも感じられる。
もちろん、ご本人に尋ねたわけではないので、実際は案外と幸せなのかもしれないが。

　敬愛する方が「食べたいから食べるのではなく、必要な分だけ食べるのです」とおっしゃったことがあったが、適度に食べる、ということは、幸せに生きてゆくためにも、新たな業を重ねないためにも、実は大切なことなんだろうなあ、などとゆらゆらと考えてしまうのである。