温暖化の足音

【生きもの異変　温暖化の足音】（４７）紅葉の遅れは黄、赤信号

2008.12.16 03:30

このニュースのトピックス：天気・季節の話題

 

　紅葉狩りは、四季の風物詩として昔から日本人の暮らしとともにあった。

　１８３８（天保９）年の「東都歳事記」には、江戸の「紅楓（もみじ）」の見ごろは「立冬より七、八日目頃より」とある。

　紅葉の始まりは新暦の１１月中旬からだったのだ。

　１７０年後の東京。気象庁によると、平年の紅葉日（赤や黄に色づいて緑がほとんどない状態）は１１月２８日。昨年は１２月に入ってから見ごろを迎えた。

　同庁の統計では、９～１１月の全国の平均気温は過去１００年で０・９４度上昇。それに呼応するように、この５０年の全国平均で、カエデの紅葉日は１５・６日、イチョウのそれは１０・７日遅くなっている。

　国連の「気候変動に関する政府間パネル（ＩＰＣＣ）」が昨年発表した第４次報告書にも、ドイツの４種類の落葉樹の紅葉が１０年当たり１・１～２・３日遅れ、日本のイチョウは同２・６日遅れたとある。温暖化での気温上昇が原因だ。

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　紅葉と気温の関係を研究している龍谷大学の増田啓子教授（環境気候学）は、１０年前から京都市内で紅葉の定点観測を続けている。増田さんが紅葉の指標日とする１１月２０日に撮影した写真を年順に並べてみると、遅れは一目瞭然（りょうぜん）だ。

　京都では３０年間でイロハカエデ（モミジ）の紅葉が７・３日遅くなった。３０年間の９～１１月の平均気温は１・５度高く、日最低気温は１・７度も高くなっている。最低気温が８度で紅葉は始まり、５度以下になると急速に進む。高温が続くと紅葉が遅れ、しっかり色づかないで落葉することもあるという。

　紅葉の遅れは、九州で一段と顕著。５０年間で１カ月に達し、２００４（平成１６）年以降、長崎（１月８日）と佐賀（同４日）では、正月明けの紅葉となっている。

　温暖化は色にも悪影響を与える。増田さんは「近年、燃えるような赤いモミジにはなかなかお目にかかれない」と嘆く。美しい色には十分な水分と日照時間、昼夜の気温差が欠かせない。「都市部ではヒートアイランド現象も加わって最低気温が上昇し、発色が悪くなった」と説明する。

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　色づき対策に乗り出すお寺も出てきている。京都でも有数の紅葉の名所、東福寺（東山区）では５年前、モミジの木の周りにスギゴケを植えた。

　「当初は根元を守る集中豪雨対策でしたが、今では温暖化対策も兼ねています」と拝観主事の爾法孝（そのほうこう）さんは話す。スギゴケには保湿効果があり、紅葉にプラスと考えたのだ。

　東大大学院農学生命科学研究科の清水庸助教（生物環境情報工学）によると、１９５０年代以降、気温上昇の傾向があり、植物は春の開花が早く、秋の紅葉や落葉が遅くなりつつあるという。芽吹きが早まり、紅葉が遅くなると、植物の成長期間は延びる。

　清水さんの予測だと、気温１度の上昇で、紅葉は約４～５日遅れる見通しだ。こうした傾向が続くと、植物にどんな影響が出るかは、現段階では、まだわからない。

　「だからこそ、生態系が示す現象の継続的なモニタリングが必要なのです」。温暖化によって「植物季節」が変化していることを多くの人が認識することが大切なのだ。

　紅葉や黄葉の変化は、そのまま気候変動への赤信号と黄信号に通じる。（田中幸美）

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 そういえば…。
きれいな紅葉、黄葉ってあまり見かけなくなったように感じる。
見かけたとしても、時期が短くなって、すぐに春の陽気になって。

毎日の連続の中で確実に時は刻まれ、後戻りできない事態に向かってじわじわと進んでいるのか。
北極の氷もそうだけど、科学的なデータや映像というのは視覚、頭脳にダイレクトに響いてくる。

　足元を見て、できることをちゃんとやること。
結局はそれにつきる。そうするしかない。